「ビューティフルドリーマー」@池袋シアターグリーンメインホール(1/23)

押井守の初期の代表作と言われる映画「うる星やつらビューティフルドリーマー」の設定を借りて舞台化した作品。10×50KINGDOM公演。会場は新装なったシアターグリーンの一番大きなホール。音が悪いぞ。

脚本・演出はじんのひろあき。10×50KINGDOMで短編300本連続上演を続けている。すでに100本上演終了。

で、ストーリーだが、文化祭前の高校が舞台。初日を明日に控えた前夜、あちこちのクラスで準備が終わらない。まもなく全校一斉下校の午後10時になるというのに。残りは15分。だが、ぜんぜんまったく終わらない。あっちでもこっちでもトラブルが続く。下校時間は刻一刻と迫って・・・気がつくと、舞台上にある時計が10時15分前をさしたまま、進まない。終わらない一日。いったい何が起こっているのか?

かつてじんのさんは劇団をやってるとき、「一生文化祭で生きられたらいいなあ」と言っていた。文化祭前夜というのは、劇団と同じ。公演前夜の大ピンチのこと。じんのさんはバックステージものも書いている。その右往左往の楽しさとシアワセを描いている。終わらない文化祭前夜というのは、「ピンチ」ではあるけど、「シアワセ」でもあるのだ。

で、この舞台だが、そういうシアワセ感や楽しさはあまり伝わってこない。役者の演技の方向性が明確じゃないのだ。ただ興奮しているだけ。いまの普通に生きている人と、同じ。芝居をやれることの意味性が、もともと弱いんじゃないのかい?

押井さんの映画は22年前だそうだが、テーマとしては、十分通じると思う。それを舞台で表現することも可能だろう。ただの「こてこて喜劇」とはまったく違う作品になるはずだ。ずっと文化祭前夜でいたいのに、人生では必ず「終わり」が来るのだ。寂しいけど。