ジョージ朝倉「恋文日和1〜3」@講談社(KC別フレ)

別冊フレンドに描いてるジョージ朝倉は、決して人気作家というわけでもないみたい。が、この「恋文日和」を出したあたりから、そこそこ売れているようだ。「恋文日和」は3巻出ている。

恋文日和」第一巻は2001年3月13日が第一刷発行で、2005年3月1日に第21刷が!

オムニバス映画「恋文日和」を見たとき、とても面白いとは思ったが、何かが違う、なんか惜しい、という気持ちになった。プロットはいい。セリフもいい。中高生の純愛の描き方として、よくできているのだが・・。

で、原作を読みたくなり、ブックオフで一冊105円のコレを買ってきたわけだ。安いぞ。

映画同様、「恋文」=ラブレターをモチーフとした短編が3巻で11話収められている。映画ではこの中から3話が選ばれ、加えてオリジナルストーリー1話がつなぎとして使われていた。選ばれた3話は変化に富んでて、確かに秀作だった。「あたしを知らないキミへ」は、たまたま拾った他人のラブレターに匿名で返事(感想)を出す話だし、「雪に咲く花」は匿名で届いた絶望的な手紙から始まる純愛だし、「イカルスの恋人たち」は死んだ兄貴のビデオレターを恋人に届ける話だし。

映画で良かったセリフとプロットは、全部漫画に描いてあった。加えて、映画では役者がヘタすぎて表現されていなかった登場人物の複雑な表情も、ちゃんと描かれていた。はっきり言って、あの表情がなければ、芝居として成立しないと思うよ。だから映画はダメだったんだ。アイドルはかわいいんで、それだけでも十分なんだけどね。でも、芝居してくんないと。

たとえば「あたしを知らないキミへ」。男の子が描いたラブレターを拾った少女が感想を書く。彼はクラスメートでその素性を知ってるわけだが、彼はその感想が匿名なので彼女が誰だかわからない。で、すったもんだあり、ラストシーンで二人は出会う。その場所に走ってやってきた彼女の必死な表情。「なんだよテメー」と言ったあと、へたりこんでいる彼女に手を差し伸べる彼を見上げた彼女の表情。手を握った後のシアワセな表情。そういうものを描きたいためにこの話はあるのに、映画ではできてない。ちなみに映画でのその少女役は、「風のハルカ」の村川絵梨だ。

あと「雪に咲く花」の小松彩夏もひどかった。すんげえ美少女で、思わずエッチなシーンを期待してしまったんだけど、残念ながらエッチなしだった。なので、生い立ちの複雑さとか、壊れそうなギリギリの心理とかが、まったく表現されてなかった。これに対し、「イカルス」のヒロイン・中国人のフーゾク嬢役の當山奈央だけは漫画を超えていた。でも男役のほう(玉山鉄二)が重要なのにヘタで・・・。

「恋文」という設定だけど、普通のラブレターはひとつもなく、メールやビデオレターなども使ってさまざまな状況を生み出し、得たいの知れない文字のつらなりの前で右往左往する少年少女を、繊細に描いていて、ほんとうにうまいと思ったよ。

いろいろと思い出してしまったじゃないかああ。